◆今回のハルカ様◆

 フライヤー内部に取り込まれてしまったハルカ様。とても不安げな表情は、今までの悲しみの底に居たハルカ様とは多少違っていました。その後、所謂ブリッジへ通されたハルカ様を待っていたのはフライヤー自身との対面でした。モニターに映し出されるアンジェラさんとスパイク君。それを攻撃するフライヤー。それを見たハルカ様は、「貴方を傷付けるつもりは無いのよ!」とフライヤーに攻撃停止のお願いをしますが、間もなくブリッジに辿り着いたスパイク君に呼びかけます。「スパイク君!?」と。 その声には安堵の気持ちが込められていたと思います。
 アンジェラさんの力で何とかブリッジに入り込んだスパイク君でしたが、フライヤーとの話し合いも上手く行かず、自らの電源を使って回路をショートさせようとします。この話し合いの時のフライヤーの言葉に「他の仲間達は皆死んだ。私1人だけが生き残ったのだ」というのがありましたが、ハルカ様はこの時、自分と似た境遇であるフライヤーに、今の自分を重ねていたご様子でした。
 その後、自分の身の危険を差し置いてもハルカ様を助けようとするスパイク君に、ハルカ様のご両親の姿を重ね、「何で私の為にみんな死んで行くの!? 私1人になって、生きていたって仕様が無いのに…」と、問い掛けます。この時のハルカ様の訴えかける様な表情は印象深いものがありました。
 スパイク君の決死の活躍もあって無事に飛び立つフライヤーでしたが、その倒れたスパイク君に涙するハルカ様。目を覚ましたスパイク君に涙するハルカ様。その涙には違いこそあれ、ハルカ様の優しさの表われである事には違いありませんね。
 最後にハルカ様は言います。「もう私、絶対に我が侭言ったりしない」と。この時のハルカ様の表情と言葉には胸を打たれました。そして結びの言葉に「さよなら…パパ、ママ…」と、今回は1つ大きな悲しみを乗り越えたハルカ様を見る事が出来て、とても嬉しかったです。
 
◆今回の堀江由衣さん◆

 塞ぎ込んでいたハルカとは打って変わり、今回はハルカの心の成長となる切っ掛けを描いていたということもあって、非常に「ハルカ」というキャラクターの気持ちを伺える場面が多かったと思いますが、そんな重要な場面を堀江由衣さんは非常に好演なさったと思います。
 「スパイク君!」という台詞1つ取っても、「あっ、スパイク君だ!」と「やめて、スパイク君!」、「良かった、スパイク君!」では全く違いますが、それをその時々のハルカの気持ちで言えているというのは大切な事だと思っているので、それが感じられたのはとっても良かったです。
 そんな中でも一番印象に残ったのは、「もう私、絶対我が侭言ったりしないよ」と「さよなら…パパ、ママ…」の2つです。場面の美しさも手伝っているとは思いますが、それを抜きにしてもハルカの心の成長を感じられる意志のハッキリした台詞には、本当に胸を打たれました。この作品を観て、目頭を熱くした最初の場面ですね。それだけ、堀江由衣さんの演じる「ハルカ」を「ハルカ」として感じられた結果だと思います。
 
◆今回の見所、感想等◆

 今回の主役はハルカ様なので、その心の揺れを主に観るのが正しいと思いますが、そのハルカ様の心を動かすだけの事をしたスパイク君は重要なポイントだと思います。
 「何でみんな私の為に死んで行くの!?」に対して、「僕は…死んだりなんかしませんよ…」「もっとみんなと楽しい事をしたいですから」というスパイク君には強さを感じましたね。この部分は、ハルカ様にとっても感じるものがあったと思います。この部分は、今までの話の中でベスト3に入るくらいの印象的な場面でした。
 無事に飛び立つフライヤーですが、目を覚ましたスパイク君に涙するハルカ様を密かに見ていたフライヤーというのは良い感じでした。この辺りは原作と描写の仕方こそ違えど、フライヤーの飛び立つ理由の1つとしては同じだったと感じられました。
 今回は「鉄コミュニケイション」という作品には欠かせない、非常に良い話だったと思いました。


●放映データ
話数 12 サブタイトル 「旅立ち」 放映日 1999.01.04
絵コンテ 中山岳洋 演出 中山岳洋 作画監督 小林利充
原画 山岸徹一、中村 基、福世孝明、中山岳洋
動画 Lee Pro
ゲストキャラ フライヤー:広中雅志


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